励起子ポラリトンのボーズ・アインシュタイン凝縮から半導体レーザーへの非エルミート相転移
- 日時
- 2018年9月28日(金)13:30 - 17:00 (JST)
- 講演者
-
- 花井 亮 (大阪大学)
- 言語
- 日本語
超伝導や超流動などの巨視的スケールで自発的にコヒーレンスが現れる現象は、現代物性物理学の中心的トピックのひとつに数えられる。ボーズアインシュタイン凝縮(BEC)は、熱化により巨視的な数の粒子が単一エネルギーレベルに占有する現象で、液体ヘリウム、冷却原子気体、マグノン、そして最近では光子に至るまでの様々な系で観測されている。また、光子レーザーは媒質中の反転分布がもたらす光学利得により光の巨視的コヒーレンスが現れる、非平衡凝縮現象である。 励起子ポラリトン系では、ポンプ強度の強弱によって、これら2種類の凝縮現象(ポラリトンBECとVertical cavity surface emitting laser, VCSEL)を単一デバイス中で実現することが可能で、両者の類似性・相違性が盛んに研究されている。興味深いことに、BECからレーザーへと系を変化させると、放射エネルギーに飛びが見られ、両者の間に相境界が存在することが多くの実験で示されている。しかし、どちらも凝縮相にあり 、系の対称性が同一であるため、このような相境界が現れる積極的な理由は一見見当たらず、実際、既存の理論は(我々の知る限り)すべて、クロスオーバーを予言する。 本講演では、このような凝縮相内で現れる相転移が、非エルミート性により引き起こされている、というシナリオを提案する。励起子ポラリトン系の最近の発展について簡単なレビューを行なった後、流入と流出のある量子多体系の理論的な枠組みを説明する。そこで得られる運動方程式の構造から、電子正孔光子凝縮体の非平衡定常解は必ず2種類に分類できることを示し、非エルミート性が相転移をもたらしうることを示す。特に、2種類の解が「合体する」点(例外点)が 、気液相転移の臨界点と同様、相転移線の終端点になることを示す。以上の結果から、予想される相図を提案する。 本講演で提案するシナリオは、非エルミート性のみが本質的であるため、流入と流出のある二成分凝縮体に一般に適用可能である。