八木アワード
若手研究者の育成支援に対する寄付金により創設されたアワードです。
概要
故 八木浩輔氏(筑波大学名誉教授)のご遺族より「原子核物理学の若手研究者育成の支援」として、特定使途寄付金が理研数理創造プログラム(iTHEMS)に寄付されました。八木浩輔氏は原子核物理学における著名な研究者で、論文、著書、国際会議開催、大学運営などを通じて多大な足跡を残されました。故人の遺志とご遺族の意向を尊重し、この寄付金を「八木浩輔クォークマターアワード」の創設に使わせて頂くことになりました。
目的
原子核物理学における若手研究者育成支援
名称
「八木浩輔クォークマターアワード」(略称:八木アワード)
“Kohsuke Yagi Quark Matter Award” (Yagi Award)
対象
以下の条件をすべて満たす若手研究者
- クォークマター国際会議(*) でプレナリー講演を行うこと。
- 当該クォークマター国際会議のプレナリー講演者に決定した時点で、40歳未満であること。
- 日本国籍を有すること。
(*)高エネルギー原子核物理学における世界最大の国際会議。正式名称は、Quark Matter: International Conference on Ultra-relativistic Nucleus-Nucleus Collisions.
授与式
当該のクォークマター国際会議終了後、「高温・高密度QCD物質オープンフォーラム(QCDMOF) 」が推進あるいは開催するミーティングにおいて、証書を授与する。
支援内容
iTHEMSが主催・共催する講演会、セミナー、会議等への招聘旅費(上限20万円)
運営委員会
- 初田哲男(理化学研究所 数理創造プログラムディレクター)委員長
- 永宮正治(高エネルギー加速器研究機構 名誉教授)
- 平野哲文(上智大学 理工学部 教授)
- 三明康郎(筑波大学 数理物質系 教授)
協力
- 高温・高密度QCD物質オープンフォーラム (QCDMOF)
受賞者
2019 八木アワード
赤松 幸尚 博士(大阪大学 助教)
この度は栄誉ある⼋⽊アワードの第1回受賞者に選んでいただき、ありがとうございます。受賞にあたって、これまでの共同研究者のみなさん、特に節々で重要な共同研究の機会をいただいた初⽥哲男⽒、平野哲⽂⽒、AlexanderRothkopf⽒、野中千穂⽒、Derek Teaney⽒、Aleksas Mazeliauskas ⽒、浅川正之⽒には深く感謝いたします。
この賞を頂くにあたって、⼋⽊浩輔先⽣の研究⼈⽣において、低エネルギー原⼦核物理から⾼エネルギー重イオン衝突実験へと研究テーマを⼤きく変えられたという話が、とても印象的でした。私はQuark Matter 2019 で⾃分の専⾨と思っていたのとは違うテーマで講演の機会を頂きました。これはピンチであると同時に研究の⽅向性を新たにするチャンスであると捉えた当時のことを思い出したからです。その努⼒はまだ実を結んではおりませんが、今⽇の受賞式でその思いがより⼀層強くなりました。これから共同研究をする皆様、どうぞよろしくお願いします。
2022 八木アワード
野中 俊宏 博士(筑波大学 助教)
この度は、栄えある⼋⽊アワードをいただきましたこと、⾝に余る光栄に思います。⼋⽊浩輔先⽣のことは、筑波⼤の名誉教授であられることや、原⼦核物理学の有名な書籍を通して存じ上げておりましたが、まさかその⼋⽊先⽣の名を冠した賞を⾃分がいただけるとは夢にも思いませんでした。
この栄誉は私個⼈の⼒ではなく、これまで出会った国内外の素晴らしい研究者の⽅々のお陰であると実感しております。特に、⼤学院⽣の頃の指導教員である筑波⼤の江⾓晋⼀⽒、数々の共同研究をさせていただいているLBL のNu Xu⽒、⼤阪⼤学の北沢正清⽒には感謝してもしきれません。
まだまだ若輩者ではございますが、今後も多くの⽅にお⼒添えをいただきながら、QCD 臨界点の発⾒を⽬指して、研究に邁進していきたいと思います。
2023 八木アワード
金久保 優花 博士(フィンランド ユヴァスキュラ大学 博士研究員)
このような名誉ある賞を受賞する機会を与えてくださった八木浩輔教授のご遺族と八木アワード運営委員会の皆様に、何よりもまず心より感謝申し上げます。この度の受賞はQuark Matter 2023のプレナリースピーカーに選出していただいたことによるものであり、まさにこの栄誉は、私のような研究分野の若手研究者を温かく見守ってくださる方々のおかげです。
Quark Matterでの講演のテーマは、"Collective Dynamics"という、特にポスドク1年目の私にとっては、あまりにも大きいものでした。このような大きなテーマに関してoverviewをさせていただけたこと自体が大変な名誉であると思っています。また講演の準備にあたり相対論的原子核衝突における動的モデルの現状を俯瞰する貴重な機会でもありました。
今後さらに積極的に研究活動を行うことで、私自身が若手研究者のアクティビティを引っ張ること、そしてそのような貢献が、クォーク・グルーオン・プラズマの物理の発展に繋がると信じております。