細胞が外界のシグナル分子を受け取る受容体の1つのグループに、ERBB1、ERBB2、ERBB3、ERBB4からなるERBBファミリーがあります。ERBB受容体は、シグナル分子を受け取ると、互いに結合やリン酸化などの反応を行い、これをきっかけに細胞の増殖や分化などの多様な応答が起こります。ところが、4種のERBBの結合反応やリン酸化反応の詳細は計測が難しく、シグナルに対する多様な応答がどのように作り出されるのかわかっていませんでした。

これに対し、京都大学ウイルス・再生医科学研究所の望月敦史教授、 理化学研究所の岡田崇上級研究員、宮城拓研究員(研究当時)、佐甲靖志主任研究員、廣島通夫研究員らの研究グループは、ERBBの組成を様々に変えた細胞と複数のシグナル分子を用いた計測実験を行い、ERBBの可能な反応を全て取り込んだ数理モデルを適用することで、4種のERBBの反応の性質やシグナルによる反応の変化を初めて特定しました。さらに、数理解析を進め、応答の多様性に本質的な役割をになう反応を明らかにしました。ERBBの反応の詳細が分かったことで、将来的には増殖や分化などのシグナル伝達が引き起こす応答を制御できる可能性があります。

詳細は関連リンクの京都大学のプレスリリース記事をご覧ください。

Reference

  1. Takashi Okada, Hiraku Miyagi, Yasushi Sako, Michio Hiroshima, Atsushi Mochizuki, Origin of diverse phosphorylation patterns in the ERBB system, Biophysical Journal 121, 1–11 (2022), doi: 10.1016/j.bpj.2021.12.031

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