数理モデルによる細胞分裂期の染色体ダイナミクスを解析
2018-06-22
プレスリリース
理化学研究所 理論科学連携研究推進グループ階層縦断型理論生物学研究チームの境祐二特別研究員(研究当時)、開拓研究本部望月理論生物学研究室の立川正志専任研究員、望月敦史主任研究員らの研究グループは、細胞周期の分裂期に見られる染色体の形成と分離のダイナミクスについて数理モデルを用いて解析し、染色体の形成と分離において「コンデンシン」が果たす役割を理論的に解明しました。
本研究成果は、理論と実験のグループが協力することにより、長年の謎であった染色体の形成と分離のダイナミクスの完全解明に貢献すると期待できます。
今回、研究グループは、染色体凝縮に中心的な役割を果たすタンパク質複合体であるコンデンシンの機能を、クロマチンとの相互作用として表現する数理モデルを構築しました。そして分子動力学計算を用いてシミュレーションすることで、染色体の形成や分離のダイナミクスにコンデンシンが果たす役割について解析しました。その結果、染色体の形態と分離速度の間に強い相関があることが明らかになりました。これは、コンデンシンが棒状の染色体の形成を通して、染色体分離のダイナミクスを制御している可能性を示しています。
Reference
- Yuji Sakai, Atsushi Mochizuki, Kazuhisa Kinoshita, Tatsuya Hirano, Masashi Tachikawa, Modeling the functions of condensin in chromosome shaping and segregation, PLoS Comput Biol 14(6): e1006152 (2018), doi: 10.1371/journal.pcbi.1006152