現代宇宙論では、宇宙が無から量子効果によって創生されたという考えが活発に研究されています。しかし、その詳細に関する二つの有力な仮説「無境界仮説」と「トンネル仮説」のどちらが正しいか、長年論争が続いてきました。

松井宏樹 基礎物理学研究所特定研究員、岡林一賢 同特定研究員、本多正純 理化学研究所上級研究員、寺田隆広 名古屋大学特任助教らの研究チームは、人為的に仮説を選ぶことなく、宇宙の波動関数を第一原理から計算しました。従来の解析では数学的な曖昧さが残りますが、本研究チームはリサージェンスという手法でこの曖昧さを解消しました。最終的に、宇宙の波動関数は無境界仮説ではなくトンネル仮説に予言されるものになることを、一定の仮定の下で厳密に示しました。これらの結果は、無境界仮説とトンネル仮説の長年の論争の解決に向けた大きな一歩となることが期待されます。

詳細は関連リンクより京都大学のプレスリリースをご覧下さい。

Reference

  1. Masazumi Honda, Hiroki Matsui, Kazumasa Okabayashi, and Takahiro Terada, Resurgence in Lorentzian quantum cosmology: No-boundary saddles and resummation of quantum gravity corrections around tunneling saddle points, Phys. Rev. D 110, 083508 (2024), doi: 10.1103/PhysRevD.110.083508

関連リンク