巨大ブラックホール周辺の磁場を初めて測定
2018-12-18
プレスリリース
理化学研究所(理研)数理創造プログラムの井上芳幸上級研究員らの共同研究チームは、国立天文台などが国際協力で運用する「アルマ望遠鏡」を用いて、「巨大ブラックホール」周辺に存在する「コロナ」からの電波放射を観測することで、コロナの磁場強度の測定に初めて成功しました。
本研究成果は、これまでの巨大ブラックホール周辺構造の理解に再考を迫るものと考えられます。 銀河中心にある巨大ブラックホール周辺には、太陽と同じように高温プラズマのコロナが存在します。太陽のコロナは磁場によって加熱されていることから、ブラックホールのコロナの加熱源も磁場だと考えられていました。しかしこれまで、ブラックホール周辺の磁場は観測されておらず、その真相は謎に包まれていました。2014年に共同研究チームは、コロナからの電波放射の存在を予言し、それが観測できれば磁場測定が可能となり、コロナの加熱機構を解明できることを理論的に示していました。
今回共同研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、90~230ギガヘルツ(GHz、1ギガは10億)の電波帯域で二つの活動銀河の中心領域を高感度・高分解能で観測しました。その結果、自らの予言どおり、いずれの巨大ブラックホールからもコロナ由来の電波放射を捉えることに成功しました。そして、その電波放射成分から計算によって導かれたコロナの磁場強度は、従来の理論予測よりもはるかに小さく、磁場ではコロナを十分に加熱できないことが判明しました。
Reference
- Yoshiyuki Inoue and Akihiro Doi, Detection of Coronal Magnetic Activity in nearby Active Supermassive Black Holes, ApJ 869 114 (2018), doi: 10.3847/1538-4357/aaeb95